2012/01/08

最高のエンディング ― 『WHITE ALBUM 2』雪菜√感想 ―

『WHITE ALBUM 2』雪菜√のほうの感想です。『coda』で春希がかずさのコンサートに行かず、雪菜のいる大阪にいった場面から。それ以前はこちらに書いてあります。


雪菜√では、春希は大阪に言って雪菜に会った際に正直にかずさとのことを打ち明けます。それ以前の選択肢でも雪菜に正直にかずさとのことを話している必要があるので、プレイヤーが体験していない『closing chapter』から『coda』までの春希と雪菜の二年間が十分に重みを持っているかどうかで結末が決まるということです。

春希の話を聞いた雪菜は春希にビンタをかまして(可愛い顔してけっこうビンタする雪菜さん)

…かずさのところへ、行って

と言います。なぜなら、春希がかずさから逃げたままでは駄目だと知ってしまったからです。かずさと向き合って結論を出さないと、春希と雪奈が結ばれることは決してないからです。雪菜はこう言います。

もう会わないからとかそういう問題じゃない。逃げても、距離を置いても、時間は何も解決してくれない

雪菜はすごく頭が良い娘ですからそれがわかっている。それでも春希に対してかずさと本気で向き合ってくれと言うのはとっても怖いはずです。このときの雪菜の心はぐっちゃぐちゃです。

かずさのコンサートに行かず自分にすがってきてくれたのは嬉しい。でもかずさを裏切るのは許せない。
かずさに心が動いたのは許せない。でも正直に話してくれたのは嬉しい。
春希がかずさと向き合って結論を出さなければ未来はない。でもかずさのほうに行ってしまう可能性が怖い。

それでも雪菜は正しい道を選びます。『closing chapter』で自らの弱さを乗り越えることで強くなったから。そしてその後二人の二年間があったから。春希が正直に話してくれたから。どれが欠けていても、ここで「かずさのところへ、行って」とは言えないと思います。

春希は東京に戻りますが、かずさのコンサートには間に合いません。春希がコンサートに現れなかったせいでかずさは荒れて行方不明になります。雪菜√ではかずさを見つけても春希は流されないでいられます。大阪で雪菜の言葉を聞いているから(ここはもう選択肢固定)。

前のエントリでも書きましたが大阪での雪菜の言葉がなければ、春希は流されてしまうと思います。そういうやつだからこんな状況になってるわけで。

じっさいこっから先の流れを見ると、雪菜がいないとダメなんですよね。かずさの世界観を変えてかずさを救ったのは雪菜じゃないですか。春希なんかしたっけ…?

雪菜さん無双状態ですが、雪菜は決して超人でもなんでもないんですよね。必死になって戦ったんだ、頑張ったんだ、というのが最後に明かされる。雪菜の弱くて醜い内面が、送れなかったいくつものメールとして、一気に開示される。

雪菜は強くて弱く、美しくて醜い。そんなのはきっと誰にもある両面なんだけど、その両面を自己肯定することはとても難しい。雪菜も、自分では肯定できません。さらに言えば、春希以外の誰が雪菜を全肯定しても、それを雪菜は信じることなんてできない。なぜなら、雪菜の弱さも醜さも、春希のせいだから。そして雪菜の強さも美しさも春希のおかげだから。

雪菜はずっと頑張ってきた。自分で乗り越えて、強くならざるを得なかった。それは結局「つまんない男」を好きになったからで、そのたった一人に愛されたかったからです。だからこそ、春希がそんなぐっちゃぐちゃの雪菜の全てを肯定すると告げたあとの、雪菜の最初で最後の「たった五分だけの甘え」はちょっと信じられないくらいの破壊力がある。

わたしが一番頑張ったんだよ! 
とっても辛い思いをしたんだよ! 
だからいいよね? 幸せになってもいいよね? 

そんなもん、

いいに決まってんだろ!!!

…すいません、興奮しました。そしてEDでは、春希と雪菜の結婚式のシーン。かずさがピアノを、春希がギターを弾いて、雪菜が歌う。春希の母親を含む家族と、友人達に祝福されながら。

そう、今度こそ本当の「最高のエンディング」