2013/01/27

『ゆきいろ』 マルルート感想

ゆきいろマルルートのネタバレ感想。たぶん短い。

1年くらい前に体験版やったときは確かマルはいいけど他があまりにどうでも良かったので結局買わなかったんですけど、定期的にマルルートだけはやりたいなぁと思い出すことを繰り返してまして、ついに買ってしまったようです。

微妙な点はけっこうあるんですが、過去編からのマルとの関係が非常に良い。あとは、「もしボタンを一つでも掛け違えたならば、この不思議な未来にはならなかっただろう」というテーマの扱い方。他のルートやってないしやる予定もないですが、マルルートの処理は好きですね。

幼なじみの関係性については文句なしです。頻繁に出てくるんですが、雪にメッセージを書いて思ってることを相手に伝えるシーン。2人で信じることにした「空の向こうから見守ってくれている六花さん」へのメッセージという形式をとって、「こたつみかんの向こうから見守ってくれている」相手に伝える言葉。並んで空見上げながら、六花さんに伝える振りをしながら。でもお互いにホントの意味はわかっている。

あと2人で帰りの遅いマルの母親をかまくらで待つシーンとかもう反則なのでやめてください。言葉少ないしならんで座ってるし…。

まあ、2人だけでいるシーンは全て良いですね。そのぶん、他の人間が入ってくるのがすっごく邪魔くさい。妹すらも。友人たちにいたっては消えてしまったらいいんじゃないだろうか…。ここが結構重大な不満点で、友人たちが主人公とマルをくっつけようといろいろ活動してたりするんですけど、これが非常にうざい。主人公とマルにはここまでの時間で出来上がったペースがあるんだから、余計な茶々はいらないんですよ。今後も、変わらないものは変わらないだろうし、変わるものは自然に変わっていく。大体、変わらないならそれはそれで別に構わないわけで。

ただこの辺りについては、わざと外的な要因(グァムでの修学旅行での友人たちの茶々とか、友人たちにお膳立てされたクリスマスでのホテルお泊りとか)を持ってきて、そこで2人の関係を急に進めさせないことにより、主人公とマル以外を無効化するためにやってたものなので、言いたいこととしては問題ないです。とは言え、友人たちのうざさがかなりのものだったので微妙な印象かなー。

小マルも同じ意味で微妙で、登場させる意味ねえだろと思います。ただこれも小マル自身が最後自分は必要なかったって言ってるので文句いえないという…。

あとはラストの「もしボタンを一つでも掛け違えたならば…」の取り扱いについて。もし過去編で、マルが主人公のもとを離れていたらというifですね。プレイ途中はてっきり、離れていたらこんなろくでもないことになっていた「から」今結ばれたことに価値がある、という展開かと思って(正確には思わされて)うへえってなってたんですが、実際には「たとえ」離れてい「ても」なるべきようになるのだ、というeven ifで締め。主人公とマルは「そういうふうにできている」、と。

期待どおり良い幼なじみものでした。

2013/01/10

『はるまで、くるる。』 感想

はるくるプレイしたのでその感想。ネタバレしないようにしようと思って書き始めたのに結局なんか中途半端にネタバレ入れないと書けなかったとのことです。

DL版がいつの間にか販売していたそうで、知ってすぐ購入(@DMM)して一気にプレイいたしました。いやー非常に好いゲームです。(シナリオが)凄いとか綺麗とか面白いとか女の子がぎゃわいいとかエロいとかオナニーがいっぱいあるよぉとかそういう「これだっ!」ていうのはないんですけど、ものすごく好感が持てる。

好感を持った理由はいくつかあるんですが、まず一つ目は、丁寧なシナリオですね。萌えゲーアワードのシナリオ賞で銀賞とってるらしいですが、なるほどといった感じ。といっても驚きがあるようなものではないと思います。記憶を消してもう一度やりたいとかいうタイプのゲームではないというとわかりやすいでしょうか。

バールを持ったヒロインに代表される違和感のあるキャラクター達が、高すぎる煙突に代表される違和感のある箱庭じみた世界でエロいことしまくっているという違和感ありまくりな展開で始まって、謎につられて読み進めていくうちに段々と状況が明かされていく。また、適当なタイミングで新たに異常な状況をつっこんで謎を供給してくれますし、魚の釣り針とかの伏線もわかりやすく入れてくれるため、ダレることなく読めます。

そして中盤から後半にかけて謎が一気に明かされるところでは、解説によって新たに生じるであろう疑問にも答えようとしてくれます。それ自体の不自然さが気になるかどうかは個人的にはさほど問題ではないです。丁寧に答えようとする態度自体が好ましい。

描写の量も適当だと思います。絶望に至るには時間が必要ですが、必要なら必要なだけ描いてある。世界の謎が明かされたとき、主人公と同じく、こりゃどうしようもねえなーと思いましたもん。段階をちゃんと追っているので展開に抜けがない。

二つ目は、すっとぼけたテキストですね。なんかバールもってるヒロインがいたり魚さばくの初めて見て「Noッ!」とか叫びまくって唐突にゲロ吐くヒロインがいたりバールをステッキにしたゲロ吐き魔法少女ヒロインがいたりいろいろおかしなことになってるんですが、ボケに全く気負いがない。かるーくごく当たり前のことのように流して書いてある。なんでも力入ってる感じのはあんまり好きではないのでこのへんも心地良かったですね。そんでいて締めるところではちゃんと締まっている。一部シリアスなシーンで古式ゆかしいリピート埋め尽くしみたいなのがでてきますがその辺もご愛嬌といった感じで流せるくらい好感がもてました。

あとはやっぱりキャラクターたちですね。主人公をナイフでぷすぷすしちゃう晴海さんはおっぱいでかすぎるので好きではないですが、他の三人は好きですねえ。なお、この「好き」は、ああセックスしたいなぁというようなものでもああ匂い嗅ぎたいなぁとかいうのでもないです。愛着ですね。静夏さんの、あそこで「ややこしい話はくだらないから朝エッチしましょう!」と言ってしまうカッコよさ。秋桜さんの「世界は今日も平和です」などと心にもないことを言いたくなるようなかわいさ。冬音さんはまあ…ずるいんだけど……。

主人公も含め、彼らはみんなどっかおかしい。虚構的なキャラクターという印象は受けます。だけど、それが否定的な印象を生むことは全くない。そんな彼らが集合している理由については物語上で説明されてたりしますが、それは関係ないです。彼らの異常さも、そういうものとして好ましいと思える。そう思えるだけの時間が描かれています。

綺麗に言えば。リセットされ、春に至れない絶望を繰り返す彼らを眺めるうちに、俺は彼らへの愛着を堆積していった。彼らが、記憶を失っても感情の残滓を堆積していったのと同じように。だからですかね、ラストシーンで春すぎる春を迎えることができた彼らに、ただただ「おめでとう」と伝えたくなったのは。

新年一発目からめでたい気持ちになれるゲームに出会えました。次作の『なつくもゆるる』が楽しみです。

2013/01/08

『夏空のペルセウス』 感想

なんだか年末年始ひじょーにバタバタしておりしかも憂鬱なイベント大量発生で全く休まらなかったようですあけましておめでとうございました。

さてすっかり時間あきましたが、体験版の感想
http://sagaslave.blogspot.jp/2012/11/blog-post.html
書いたのに本編感想ないのも座りが悪いので、夏ペル(夏空のペルセウス)の感想を書いておこうと思います。ネタバレあり。

一言で言うと微妙でした。ちょっと期待しすぎてしまったのも悪いんですが、透香さんのルートで肩透かしくらった印象です。なぜそんな印象になったか体験版も含めてプレイ時系列に沿って感想書いていきます。あんまりやる気ないのだけれど…。

始めに簡単に設定書いておくと、主人公と妹の恋(名前)は、どちらも他人の「痛み」を自分に移すという力を持っています。そのせいで人に利用されたり、他人と深くかかわれなかったりしてきました。そんな中で逃げるように物語の舞台となる(同年代の少女が3人しかいない this is エロゲ)ど田舎の村にたどり着く。そこにいた少女の一人は、不治の病に侵されており――と実によく誂えられた舞台設定でしてこうなるともう「救う」うんぬんの話になるに決まってやがると予想して、敏感に気を張って読んでいったわけでございます。

で、共通と透香ルートの序盤までが含まれている体験版。体験版プレイ時の感想は別に書いてますので、簡単にまとめると、主人公が自分の能力を(他人に利用されて強制されて使うのではなく)自分の意思で使って透香を(彼女の許可を得ずに)救おうとしますが、能力が透香にバレてしまい、透香に勝手に救うという行為の傲慢さを糾弾される。

この段階で安心したんですけどね。本編ではこの先を書いてくれるはずですから。自分からみて相手のためになる行為であろうと、一般的にみて相手のためになる行為であろうと、許可を得ない限りは、押し付けでしかない。これが「前提」です。その後どう行動するにせよ。

まあ要するに、俺が体験版プレイして購入決めたときに勝手に期待したものは、この「前提」を踏まえた上で主人公はどうするのか、だったわけです。

でこんな予見を抱いた状態で本編をプレイし始めました。なお、透香さんルートはロックかかってまして、他3人(恋、翠、あやめ)を攻略してからじゃないと進めません。まずは恋さん。個別で一番良かったです。

恋は他のヒロインとは違って特別な位置に立っています。まあ妹だから当たり前なんですが、能力的にもそうなんですよね。彼女だけ、主人公と同じ位置に立つことが可能。また、恋のほうが主人公よりも能力が強いため、主人公は恋に対してのみ普通の人間のように接することができる。つまり、恋を傷つけても、その痛みを感じないでいられる。

最後のやつは極めて重要な特権です。なぜなら俺は、主人公が他人に干渉することを忌避していたのは、例えば自分が素手で相手を殴った場合、その痛みが自分に跳ね返ってくる、ということによると考えているからです。相手の痛みが自分に移る、というのは、そこまで恐ろしいことではない。ましてや相手の痛みをなくしてやっているわけだから。自分は被害者でいられるし、優しい僕ちゃんでいることもできる。何もつらいことはない。快感すら覚えますよ。ああ俺はつらいんだキモチイイっ!!!

そういうことじゃねえだろと。他人に干渉するということは、相手を傷つける覚悟を持つということであって、それによって自分も傷つくという覚悟を持つということでしょう。主人公はこの構造を明示的にしてしまう能力を持つがゆえに、こんな当たり前のことから逃げる言い訳を無自覚に得ているだけです。

ちなみに俺は明示的にしてしまう能力を持たないので、自覚的に他人に干渉しないように努力しています。傷つきたくないからねっ☆

さて俺の話は置いといて恋ルートの話に戻ります。恋さんはすごく賢いので、こういった構造とか、自分が主人公にとっていかに特別な位置にいるかをよーく理解している。例えば、初体験のシーンで、破瓜の痛みを主人公に味あわせない、とかもそうですが、全体にわたってキレッキレの台詞を連発してくれて非常に楽しかったですね。あと、ラストの逃避行は、まあ大好きです…としか…。

続いて翠さん。このルートは甘酸っぱくてふたりとも死ねばいいのに(嫉妬感)。少し真面目に書くと、このルート、体験版やらずに一発目に行ったら「えっ何このヤマ無し展開」ってなると思います。だけど、主人公がどんな奴かとか、その能力の意味するところとかを把握した上でプレイすると、翠ルートは、主人公の悩みだとか、「救う」とか救わねえだとかそんなもんは全てくだらない話で、簡単に(まあ俺にはそんな青春はなかったけれどもな!)解決してしまえるんだ、ということを表現するためにあったんだろうなーという印象を受けます。はぁ…恋がしたかった……

あやめルート。おっぱいでかすぎてもはやモチベーションの維持が困難になりメタに見るしかできず残念な結果に終わってしまったという噂が俺の内部で流れておりますが、このルートは本当にひどい。体験版やってたので透香さんルートでめっためたに打ちのめされることを知ってたから何とかプレイしましたが、そうでなかったら放り投げてたんじゃないかしら。

主人公が勝手にあやめの「心の痛み」を無くしてあげようと能力を使う。当然ながら「心の痛み」なんてもんは今のあやめを構成する重要なパーツの一つです。それを勝手に奪ってしまったせいで、あやめがあやめでなくなってしまう。最悪ですよ。しかも自分が何やっちまったのかまともに理解できていない。プレイしながら「ダメだこいつ」ってずーっと思ってました。お前取り返しのつかないことしたんだよって。

しかも解決策がまたひどい。彼女が失った「心の痛み」を再度植えつけることで、彼女を元に戻す。またもやあやめの許可を得ることなしに。おまけに主人公が考えた計画では、「自分を犠牲にしてもいい」などと悲劇のヒーロー気取りである。もうね、アホかと。

誰かを救うという行為が、自らの犠牲と結びついている精神構造はまあこれまでの経験から仕方ないのかもしれませんけど、お前は自らの意思に関係なく行動を決められることの腹立たしさを、利用されつくした経験からよーく知ってるんじゃないの?っていう。

実際には、透香さんとか恋さんとかの大活躍により主人公の作戦どおりにはいかないんですが、あやめさんに再度トラウマ植え付けてほぼ元に戻して終了という、なんとももやもやする展開で終わります。

ただまあこの段階では透香さんルートで主人公のクソ野郎がメタメタに打ちのめされてここまでの鬱屈とかはどのような形であれ解消されるのだろうと信じておりました(フラグ)。というような状況で透香ルートが開放されたので突入したわけです。

正直もう書くのだるくなっているので、簡単に。主人公が体験版の終わりの段階で透香のことを好きになっていた、とするには描写が足りなさすぎると思う。それならば、あの告発シーンでの透香の美しさに圧倒されて惚れてしまった(俺はそうです)とやってくれれば良かった。

そして、あの言葉を受けて、自らの身勝手さを知って、惚れた相手に同情などいらないと言われてもなお、ただ自分が惚れた相手に生きていて欲しいという身勝手な欲望のままに、彼女を救ってしまえば良かった。あるいは、ただ見るしかできないのであれば、そのまま立ちすくんでしまえばいいじゃない。良くねーけど。

都合よく改変された能力による大団円など、くだらないにも程がある。


以上、勝手に期待した人間の身勝手な感想はこのへんで終わりにしておきます。