2013/04/29

『運命予報をお知らせします』 感想 (ネタバレ無し)

ついさっきプレイし終わりました。素晴らしい作品です。デビュー作だとか今月もう一本買って先にプレイした少女神域なんちゃらが非常にダメな感じだったとかで評価が甘くなっているわけではなく。Lassは次出ても絶対買わないからな! あ、ヨナキウグイスさんは積極的に買っていこうと思います。

たぶんそんなに売れてないと思うので頑張って重大なネタバレ無しで宣伝したいと思います。できるかなあ。\お兄ちゃん、頑張って!/ ……こんなん書いて余計自信なくなってきた。(4/30 追記:おなにーバレ注意!)

一言で言うと、ごく普通の舞台で、真っ向から「本当の恋」なんていうド直球のテーマを見事に描ききった作品です。ひどく理屈っぽい主人公を据えて、ルートの構成もかっちりしていていながら理屈のみで終わることなく。かといって「細けえことはいいんだよ!」というだけに陥ることもない。絵とか演出が弱いかな、とは思いますが、それでも充分すぎるほどの力作であることは間違いないっすね。

さて、簡単に紹介します。物語の舞台としてはただの学園ものです。魔法とか特殊技能を学んだりはせず、男女共学の普通の学校。その中で主人公は学園の執行部に属すことになって、そこにいる4人の女の子がヒロインです。この執行部も別に巨大な権限を持つことはなく、変わったこともしません。仕事と言えば、球技大会とか文化祭とかの裏方くらいなものです。

ヒロインも、実妹の光、クラスメイトの夕紀、先輩その1の観月、執行部会長の夏帆、の四人で空から降ってくる少女はいません。あくまで普通の舞台ですね。かといって読ませる力がないわけではないです。掛け合いが楽しい、というか金髪ロリちょろいダダ甘いじって面白可愛い観月せんぱいがとにかくかわいいので彼女を見ているだけで読んでいけます。ちなみに観月せんぱいルートはロリ少女に理屈っぽい主人公が叩きのめされるベストルートだと思います。過去の真相は強烈ですし、圧倒的な優しさっつうもんも見せてもらえました。体験版感想で西尾維新的ツンデレなどと評したことを深く反省する次第であります。

そうそう、ルート構成も上手いです。デビュー作ということで俺みたくライターさんの同人作品をやったことない人をスムーズにのせてくれたなーと。このゲームの構造は、基本的に時系列に沿った一本のラインがあってその途中で各ヒロインのルートに分岐という形になってるんですが、まずはごく普通のエロゲ妹に見える光ルートへの分岐に向かって展開します。この非常に慣れ親しんだタイプのキャラクターへの道で、次第にプレイヤーに違和感を抱かせ、何が真相なのか不安にさせていくのは上手い。あっこのゲームは普通に見えるけど何かあるぞ、と思わせてくれます。

選択肢は構成に従ってシンプルに3つ。光を選ぶか。夕紀を選ぶか。観月/夏帆のどちらを選ぶか。選択肢が出る場面が特徴的で、前者二つは「選ばない」ほうが"物語上自然"な状況で選択肢がポップアップされます。ただし、メインがあってサブ的に他のヒロインのルートがあるといったわけではないのが良いところです。まず光ルート選んで貰えればわかると思うんですが、選択肢時点においてそのキャラを選ぶことの隙をしっかり個別ルート内で問題として取り扱い、きれいに解消してくれます。この辺はかなり丁寧。理屈っぽいともいいますが。

また、この構成だと当然ながら最後に行くに従って「選ばれなかったヒロイン」が増えていくことになります。しかも"物語上自然"に。さて、わざわざダブルクオーテーションつけましたが、"物語上自然"って何だよって話なわけで。例え選ばれないことが自然であったとしても、「選ばれなかったヒロイン」の恋心は確かに存在していたはずだろう、と。その扱いはどうするんじゃ!と心優しい僕ちんなんかは思ってしまうわけです。

この恋心の取り扱いについては夏帆せんぱいルートでしっかり描かれます。この作品の見事な点の一つでしょうね。まあそのせいで夏帆おっぱいルートなのに観月ちっぱいのほうが魅力的だという困った状態になってたりもするのですが、観月せんぱいがかわいすぎるのでしょうがないかと。ちなみに観月せんぱいはおなにーを覚えたそうです。性徴物語って素晴らしいですね☆

こんなところかなー。宣伝になってるのだろうか…。ともあれ、がっぷり四つの恋愛賛歌で読み応えもある非常に良い作品でした。大変に気分が良いようです。

あー明日しごとしたくねえ……。

2013/04/07

『向日葵の教会と長い夏休み』 感想

ようやくひまなつ全4ルートプレイし終わったので感想を。

とにかく力入れて作ってあるなーというのがまず。音楽とか、一枚で有無言わさないような絵とか。これらは文句なしに素晴らしい。テキスト読む手が止まって呆けたようにCG眺める時間がかなりありましたね……。

シナリオについては、複数ライターさんで各ルートいろんなテーマを書いているにも関わらず『向日葵の教会と長い夏休み』から外れることはなかったと思います。まあ主人公のキャラは数人いましたけど、ほとんど悪印象は受けなかったかなー。

ほんじゃ各ルートについて。プレイした順で。ちなみに推奨攻略順は金剛石→ルカ→詠→ヒナだそうです。ただこれは「伏線的には」という注釈の下でということなので、個人的には別にどっからやってもいいんじゃないかと思います。以下ネタバレあり。長いな……。





まずは詠ルートから。このルートは2番目に好きなルート(1番はダイヤ)です。前のエントリで駄文を垂れ流しましたけど、基本的には物語を読むことしかできなかった少女とその少女のために物語を紡いだ少女(と少年)の話だと思って読んでました。章変わって黒猫視点に移って、黒猫が今の詠(詠2とでもしておきます)であり、物語の語り部である(視点も彼女に移る)と認識した辺りで一気に引きこまれました。俺てっきり昔の詠が死んで黒猫に乗り移ったとかそういう話だと思ってたので……。

読んでるときはとにもかくにも、読み手の少女(こちらが詠1)の「おとぎ話だけでいいんだ」という言葉にただの読み手でしかない自分を重ね合わせて、彼我の距離に勝手に打ちひしがれるような、詠に憧れるような、そんな感情を抱いてました。彼女が本当に幸せそうに、物語を紡ぐ少女(詠2)に感謝の言葉を述べて消えるシーンはとても美しい。俺には後悔しない自信などない。

ただまあ、この読み方は間違いです。俺が勝手に誤読して勝手に打ちひしがれていただけです。あたしってほんとばか。というのも後半、詠1は主人公にかつて自分では言えなかった別れの言葉を伝えるために再登場するので。この物語は、あくまで物語を紡ぐ者、言葉を使う者たちのお話です。

元黒猫の少女が、主人公を悲しませたくないと願って言葉を得て、物語の舞台から降ろされてしまった少女に、物語を紡ぎ、届けた。

登場人物でなくなってしまった少女は、元黒猫の少女によってかろうじて物語とつながっていられた。ただ、せめて別れの言葉だけは、自分の言葉で届けたいと願った。

そして主人公が3人のつながりを願って、わずかな奇跡が訪れた。

そんな話だと認識してます。3人は言葉でつながり、言葉を伝えたいとそれぞれが願った。ここで描かれているのは言葉に対する信頼あるいは信仰のようなものだと思う。この思想に対する好き/嫌いは置いておいて、面白いテーマでした。俺は基本的には言葉の力などというものは信仰しませんが(おい)。

あとは…まさかのEDまでHシーン0。さいろーさんが担当だと聞いていたのでけっこう驚きました。エロローグで一気に補完されましたが、エロだけ連発されるとかなりつらい。おいたんそんなに元気ないので……。あと尻タブレットはあれどうなんですかね。笑ってしまってエロさ減退効果しかなかったと思うんだけど。だってさぁ、Hシーン読みながら、タブレットにおしりのCGを大写しにして文字書いて遊んだら楽しいんじゃないかとかくだらないこと考えてしまって集中できないんだもん。あ、タブレット持ってて性癖が合う方がいらっしゃったら幸いです。


さて、次は雛桜ルート。要約すると、こどものままでいてほしかった……。このルートはこども編と大人編に分かれた構成になってます。こども編はヒナを引き受けて共に暮らすことを決意するに至るまで、大人編はヒナが成長して学生になったころから始まって2人が結ばれるまでです。

こども編はかなり好きです。つーかツイログ見てたら俺のテンションおかしいですね。ヒナが一向におおきくならないので「さてはボケて幼児退行したロリババアだな!」とか叫んでるよ……。ヒナにごめんなさいしないといけないね……。でもさぁ、ルート入ってんのに、自分でパジャマ着替えられなかったりしたらこのまま行ったら大変なことになってしまうわけでなんとか整合性を俺の中で頑張って考えた結果なのです。ごめんなさい。

基本的にヒナがかわいいので楽しく読めます。お嫁さん気分なこどもとか素敵すぎる。この夫婦、奥さんのおねしょが原因でけんかしてベッドを別にしたりするそうですよ。初めて結婚したくなったわ。

シナリオも良い。流れとしては、ヒナも主人公も(ルカもですが)実の親に育てられていないって境遇で、そこをテーマに家族の話を核にして展開します。ただ、ここが重要なんですが、主人公がヒナを捨てた親に対峙するのだけれども、問題は解決されないし、ヒナを捨てた理由すら明かされない。

これは良かった。子供は親を選べないなんて当たり前の話で、どうしようもなく捨てられた。理由があろうとなかろうと、選ぶこともできず結果のみを突きつけられた。それは暴力でしょう。ならば、理由すらも知る必要はない。知ったところでどうにもできないのだから。

ヒナが子供であるというところをちゃんと意識して書いてあるということですかね。テキストも詠ルートはちょっと気障すぎに感じましたが、こちらはそんなこともなく。

あとはこども編だから回想になるようなシーンはないものの、お風呂で髪洗ってあげるシーン(なぜか向かい合っていて、シャンプーハットという素晴らしいアイテムにより目を開けることができるようになった(えらい♪)ヒナの上目遣い下目(ちんこの方角)遣いが堪能できると評判です)とか、添い寝おねしょとかがちりばめてあってぼくはまんぞくです。

それはそうと! 添い寝おねしょって寝相悪いこどもだと寝ているうちに上下逆さになったりするので主人公の顔のあたりにおまたが来たりして顔面おねしょとかになる確率がかなり高いのではないか。データが欲しいというかそういうのがあるエロゲやりたいです。

一方、大人編ですが、こっちのメインストーリーはいらなかったんじゃないかしら。こども編で解決されなかったヒナの親(主人公の育ての親でもある)の問題がここでまた蒸し返されて最終的には解決されるんですけど、そんなもんどうでもよくないか、と。あの問題はヒナが選択できる人間という意味での大人になって初めて解決可能なものだという考え方はいいです。でも、解決可能であるからといって解決する必要はない。

主人公とヒナが新たな家族を生む(最後、家族4人のCG)ためには、呪いを断ち切る必要があったというロジックは理解できるし、綺麗な構成なんだけど。たぶんねー、俺が見たいのは、呪いを断ち切らずに祝福の子を生むようなお話なんですよね。

ちなみにメインストーリー以外は基本的に楽しんで読ませていただきました。父親代わりの主人公がドーテーなんじゃないかと心配するヒナさんは娘の鑑です。今や「おとうさんって、ドーテー?」は娘に言われたい台詞No.1の座を占めていると聞きました。

あ、そういえばヒナさんが部屋でこっそりオナニーしてるシーンがないという重大なバグがあったんですがあれはパッチでたのかしらん。オナニーに興味を持ってローター買ったのが主人公にバレて家族会議に発展するシーンまであったのに……。下敷きにもなってるのに……。


だいぶ長くなってきましたが続いてルカさん。これはいまいちですかねー。このルートはED直前のHシーンのために全てのストーリーが存在してたという認識です。試しに俺主観でストーリーをまとめてみると次のようになります。

えっちなルカさんは自分ばっかり主人公をおかずにオナニーしているのが不満で(おお!)、主人公にも自分をおかずにオナニーしてほしい(おおお!!)という願望が爆発してついつい妄想エロ小説を書いてしまってました。その妄想が青バラ(そういうキャラがいるのです)によって自分のエロ写メが主人公に送られたおかげで予期せず現実になっていたことを知って喜ぶ(よし!)。そんでED直前のHシーンで、主人公がルカの目の前でルカをおかずにオナニーをし、主人公はルカに「俺をおかずにオナニーしろ」と言ってめでたしめでたし。

最後の台詞に至ったときにはストーリー展開の意味が全て腑に落ちてけっこう感心しました。ただあんまりエロくないんですよね。エロシーンのテキストが合わなかったせいかなー。


さてようやく最後。金剛石ルート。自分でもびっくりしたんですけど、このルートが一番、しかも圧倒的に好きです。いつものように「なんかおっぱいでかいし背も高いしなー」とか思って後回しにしてたんですが、はじめてのオナニーに至る瞬間を切り取った名シーンはあるし、ダイヤさんはやたらとかわいいいきものだし、そして何より、永遠を信じさせてくれる「幸せ」というものが書いてあった。

ストーリーは他のルートに比べたらベタでありふれたものですが、素晴らしい描写を伴ったシーンがいくつもあります。

夜の川辺散歩で、よくわからない自分の感情をごまかして相手に対するところから始まり、ファーストキスの直前、空き教室に訪れた気まずさを伴わない沈黙。音がなく空気が止まったような密閉空間。相手と同じ感覚を共有して境が見えているにも関わらず曖昧に思えるような時間。

阻むものを乗りこえた後、ベンチに座ったダイヤに膝枕されるシーン。時間がゆっくり流れている。全てを伝えあう必要もないから、言葉は徐々に消え、眠りに落ちていく。詠ルートでは主人公は自分のことを「幸福者だ」と宣言したが、金剛石ルートでは「幸せ」は音のない一枚の絵に集約されている。

彼らの幸せをずっと眺めていたくなるルートでした。このルートやると、なんだかますますエロゲやりたくなりますな。


次は何をやろうかしら?

2013/04/02

『向日葵の教会と長い夏休み』 詠ルート 感想、じゃねえなこりゃ…

『向日葵の教会と長い夏休み』 詠ルートの感想、じゃなくてポエムと自分語りです。これはひどい。まだましな感想はこちら


***


このルートの登場人物は三人。二人の語り部と、一人の読み手。

語り部の少女は、かつて「言葉」を持たなかった。同じ地面に立つ登場人物であるにも関わらず、聞くことはできても伝えることはできなかった。ただもどかしさを抱えて立っていた。

読み手の少女は、かつて「言葉」を持っていたが、同じ地面に立てなくなってしまった。登場人物でなくなった少女は、語り部がいなければ物語に触れることすらできはしない。彼女は物語を失ったのだ。

二人の少女が再会したとき、物語を失った少女が願ったのは、失われたはずの物語。登場人物になれなくても、おとぎ話を聞かせてほしいという我が侭。その願いを叶えるために語り部が生まれた。

二人の少女の関係は、読み手が消えて、語る意味が無くなるまで続いた。ただの我が侭で、自分の欲しい物語を語らせ続けた少女は最後にただ感謝する。

物語が終わる。 
幕が下りる。 
だから、■は言う。 
やさしく、そしてうれしそうに……。 
「……今までありがとう」 
「私の物語を作ってくれて……」 
「私が見る事が出来なかった世界を見せてくれて……」

ただ、彼女が読み手として語り部の少女に送った最上級の感謝の言葉は別にある。それは彼女が繰り返し繰り返し語った言葉。

「私が持っていくのは、おとぎ話だけでいいんだよ」

諦めではなく、自嘲でもなく、虚勢でもない。彼女がうれしそうに語る姿は、あまりにも俺の姿から遠く、美しい。

いつか、消える前に、俺はそこに辿り着けるのだろうか。


***


まあ、プレイした方はわかると思いますが、こんな風に読むのは正確じゃないです。ただ、プレイ途中はその後の展開を知らないので、詠のあの言葉に完全に読み手としての自分を重ねてしまって、こんなきもポエムを描いてしまい……反省しております……。すいません……。

自分のなかの理想の読み手、こうありたいもの姿が詠だとして、詠と自分との距離に勝手に打ちひしがれるといった感じですかね。

実際問題、もはや物語でしかというかキャラクターを借りないと感情がめったに動かなくなってる状態でして、例えばえろしーんとかでも主人公が興奮してないとダメなんですよね。状況説明とヒロインの喘ぎ声だけとかだと全く興奮できない。主人公が興奮しているその感情に同期しなけりゃ興奮することすらままならないという。オナニーしててもこれじゃ主人公に憑依して主人公を手コキしているようなもんです。嫌な話だ。

まあ昔からそんな感じだったので、今後もこのまま何かを確認するように物語を消費しつづけるんだろうなーとはわかりきっているし、別にそれに不満とかも特になかった「つもり」だったわけです。ところが、詠の「私が持っていくのは、おとぎ話だけでいいんだよ」っていう台詞を聞いたときに、俺はこんな風には言えないなぁと思ってしまった。俺が同じ言葉を語るときがあるとすれば、それは諦めの先にしかないんだと思う。それがすげえ悲しいなーと。まあそういう話です。