2012/07/21

『ラストゲーム』 1~2巻 感想

『ラストゲーム』という少女漫画の1~2巻まとめ読みしたのでその感想です。

1巻、特に2話まではかなり面白かったです。主人公の柳は、金持ちの息子で成績優秀かつ運動もできてしかもイケメンという完璧超人の男の子です。物語開始時は小学生。柳はみんなにちやほやされて見事に調子にのっている嫌なガキなんですが、そこに柳より勉強も運動もできる美琴という少女が転校してきます。お約束どおり、負けたのが悔しい柳は美琴につっかかっていきます。ところが美琴にはロクに相手にされない。というか関心を持ってすらくれない。ちくしょう見返してやる!……といった感じで始まります。うん、ベタですね。

この漫画のいいところは、柳の心情描写ですね。放っておいても他人のほうからかまってくれるのが当然であった柳だから、自分に関心すら払ってくれない美琴のことが気になって仕方がなくなる。この時点で彼にとって美琴が特別になっているので、美琴のことばっか考えてしまう。美琴が何でもない気持ちで言った一言で行く中学を決めたり、美琴にそっけなくされると落ち込んだり。

放課後、教室で無防備に眠っている美琴を見つけたシーンなんかはたまらない。美琴の寝顔を見ながらの柳の独白。
…こっちを 見ろよ
思い知れ
――お前に 勝って
その瞳に オレを 映させてやる
いーねー片想い少年!おじさんそういうの大好き!……この後からは、美琴に成績とかで勝つのではなく、美琴を自分に惚れさせることで自分のほうを向かせようと頑張り出すんですが、このあたりのドタバタ振り回されっぷりが実に楽しい。完全に美琴に惚れてるくせにそれを認めようとしない柳くんかわいい。

ただ、俺は柳を客観的に眺めてニヤニヤするよりは、柳に感情移入して擬似片想いを楽しみましたねー。美琴がたまに見せる笑顔とか、小学生時代から変わらない美琴の信念を再び目にして圧倒されたりとか、「美琴に好きになってもらえるヤツ」を羨ましく思ってしまったりとか、美琴に恋している柳のまなざしの描写が丁寧なので、自然と柳に同期してました。

そうやって読んでると、美琴がすごくかわいく見えてくる。母親が倒れたと聞いて呆然とする美琴を放ってはおけないし、母親が無事だとわかってほっとして涙を流す美琴に今度は俺が呆然とさせられる。(助けてくれて)ありがと、と言う美琴の笑顔に見惚れてしまう。そしてこう思うわけです。「ああ、俺、美琴に惚れているんだ」と。あの笑顔はやばいですよ…。

といった感じで実に楽しく読ませていただきました。ちなみにここまでで2話です。3話は美琴視点で書かれていて、ふつーに面白いんですが、柳に感情移入して読むのに比べると楽しさは落ちちゃいましたね。ちなみにもともと3話読み切りだったらしく、3話で一旦綺麗にまとまって1巻が終わります。

そして、2巻からは連載開始後のお話になります。柳視点と美琴視点のどっちも織り交ぜつつ第三者視点で書かれていますが、こっちは正直イマイチでした。美琴視点が増えたのが個人的にはけっこうなマイナスでしたねー。美琴はなんつーか、天然でして、恋愛とか全くわかってないキャラなので、美琴視点になったとき、俺が少女漫画を読むときの基本スタンスである「恋する女の子が悶々とする様子を舐めるように楽しむ」ことができない。もちろん、初めは知らなくても、恋に落ちたり、自覚したりしてからは楽しむことができるのでOKなんですが、この物語に関して言えば、美琴が柳に惚れたら終わり、という設定なんですよね…。それならば、柳視点のみでいってくれたほうが個人的には楽しかったかなー、と。

まあ、1巻が素晴らしかったのでしばらくは追っていこうと思います。