2012/08/19

織塚

『終わる世界とバースデイ』の織塚の話。

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「終わる世界」の虚しさを本当に知っているのは、織塚だけなんだよね。

バグによって生まれた、主人公と織塚だけの世界。たった2日しかなく、リセットされれば主人公は全てを忘れてしまう。

リセットされることで無意味にされてしまう時間。しかも彼女自身がリセットボタンを押さねばならない。それが彼女の役割だから。役割を全うしなければ、彼女は「終わる世界」にすら存在を許されなくなってしまうから。そうしたら、彼と過ごした時間の記憶さえも失われてしまうから。

たとえ無意味にされる時間でも、忘れたくはない。だれにも邪魔されず、先輩に触れられる時間を忘れたくはない。そして、たとえ意味などなくても、自分の想いを伝えずにはいられない。

「入莉」と主人公のためにという理由で存在を許された、「入莉」の失敗作としての彼女。バグのない「終わる世界」では主人公に想いを告げることはできない。でも、バグによって生じた世界では想いを告げることができる。彼に、ちゃんと、触れることができる。

それが、とても嬉しい。

彼女が無意味と知って「けしからんドリーム」を見続けるのであれば、俺も無意味と知りながら、彼女の夢を見続けよう。そんな戯言を頭に浮かべながら、「After 17th」をループしている。