2012/08/26

『さくら、咲きました。』 感想 (ネタバレあり)

『さくら、咲きました。』 プレイしたのでその感想。ネタバレあり

合いませんでしたねー。最大の理由は、「今日は地球が生まれてから、一番にぎやかな日になる!」っていう掛け声に象徴されるメッセージが、俺に向けられたように感じられてしまったから、そしてそれに全く共感できなかったからだと思います。

主人公たちはトコシエ、成長するが老いることはなく、永遠の寿命を持つ存在です。外傷によって死ぬことは可能だが、病気や寿命で死ぬことはない。だから、死というものは遠いものとして存在し、自分のこととして考えたことはない。そんな彼らが、小惑星サクラが地球に衝突し、人類が滅びるというニュースを受けて、死を見つめる。死を見つめることは、生きる意味を探すことと同義でありうんぬん。

各キャラクターがそれぞれの答えを出して、それぞれのやり方で、終わりの瞬間をどのように迎えるか、を描いた個別ルートは良かったです。特に美羽ルートは素晴らしい。いろんなもんを諦めてしまったキャラ(またか!)ですが、好きなもんはしょうがない…。

描写が良かったんでしょうね。特に、諦めたフリをしているけれど、漏れでてくる苛立ちの描写がいい。他人に踏み込まれるのは大嫌いで、いつもは吐き気がするような苛立ちを覚えるんだけど、なぜか苛立ちに心地よさを伴う相手が現れてしまった。自分から彼に踏み込むことは怖くてできない。だから隙を作る。踏み込んでほしい、決めつけてほしい、そして、独占してほしい。これが前半、主人公と結ばれるまでで、この辺りは完全に美羽に同期して読めました。この自己愛野郎!といった感じでアレなんですが…。

ただ、後半、特に隕石を迎えるラストシーンは美羽に圧倒されましたねー。落下する隕石をバットで打ち返そうとする、馬鹿げたおとぎ話のような虚勢。そうするしかない場面がある、と感じられた。敵わないことは知っているから、嘆くことはしない。諦めているのだけど、抵抗する意思を示さずにはいられない。

あー、すげえなあって。このシーンについては、CGも良かったんでしょうね。

で、この辺までは結構良い感じで読めてたんですけど(ただし共通はだるかった)、その後、つばめルートから、さくらルート、桜ルートとつながる本編ですね。これが全く合わなかった。

つばめルートに関しては単に、主人公とつばめ以外の他者がお膳立てしてくる展開が嫌いだっていう話です。生活部の仲間か何かしらないけれど、それは他人でしかない。二人で完結してほしいんですよね。まあ好みの問題ですが。

その後の展開についてはそれなりに驚きはあったんだけど、事実を提示された時点でこの物語の重点は「充実した生を送るために」なんだなあ、と思ってしまって冷めてしまいましたね…。いや、ちょっと違うかな。「生きるためには毎日何らかの特別なことをして楽しまねばならない」といったほうが俺の受けた印象に近い。

これが例えば、100年生きた特定の人間の心情としてのみ提示されるのであれば良かったんだと思います。某ヒロインのルートなんかはすんなり読めましたし。

ところが、最終的には、全員の掛け声、「今日は地球が生まれてから、一番にぎやかな日になる!」によって締めくくられる。グランドルートにおいて、あたかも俺に語りかけるように、です。

知らんがな。