2015/10/16

Charlotte(シャーロット) 感想

というわけでシャーロットの感想まとめ。すごい長い……。

まとめてみると非常に楽しめたのだと思います。毎週見るごとにそこまでのお話から妄想される展開を予想しながら見てましたし。

たとえば前半3話くらいまでは、有宇くんが折にふれて言及する「不完全な能力」という設定に注目してたらしく、自力で止まれない瞬間移動のようなどこか間の抜けた「不完全な能力」が、星ノ海学園の生徒会における能力者どうしのよい連携(たとえば3話後半でプロデューサー脅すところとかですね)のスケールとして、能力者全体において「完全な能力」に相転移するんじゃないかというような期待を持って見ていました。ただまあこれはハズレだったわけですが。

他にもいろいろと妄想はハズしまくっていて、最後までずっとつきまとっていたのは、5話で有宇くんと友利が星空の下でZHIENDの曲を聞くシーンで浮かんだものです。友利から音楽プレイヤーを渡されて曲を聞いた有宇くんが見ただだっ広い草原に一人立っている絵で、この物語は孤独についての話なのかな、と認識した。この場面で有宇くんは「なんだか、広いところに1人立っているような、不思議な気分になる」と言い、友利はそれに「わかってるじゃないっすかー」と共感し、「ZHIENDの音楽は、すごくすごく広大で、ひたすら孤独なんです。それは作曲もこなすボーカルが、両目の光を失っているからだと思うんです。景色がどこまでも広がっていくイメージで。」と語る。画面には街の灯の群れが映っている。これはOPの平行した流れ星だとか、街中の雑踏とか、ビル群の風景に想起されるイメージと同じもので、その後ろに流れる『Bravely You』の「ひとりきりじゃなかった」という歌詞に補強される。孤独についての話はとても興味関心があって、特に流れ星の平行はどうしても気になってしまう。同時的で、交差しない連帯ですな。この認識は最後までまとわりついていたようです。圧倒的誤読力。

誤読の話ばっかしててもしゃーないので、じゃあ今は何の話だと読んでいるかというと、基本的には(ディス)コミュニケーションの話だったのだなと思っています。俺がどう反応したかはひとまず置いといて。この物語の後半で、有宇くんと友利とは本来成り立たないはずのコミュニケーションを主に友利という少女の性質によって成立させている。

6話を時間軸上の起点として、中盤ではタイムリープによって物語が展開します。もともと居た時間軸を世界1とすると、ここでは有宇くんの妹の歩未が死ぬが、やさぐれ有宇くんは友利によって立ち直り歩未の死に適応しはじめ、逆に友利のお兄ちゃんは有宇くんとZHIENDのボーカル・サラによって能力に依らず奇跡的に回復に向かう。歩未は死んでしまったが、その後漸近的に良くなっていくマシな世界とでもいいますか。

一方で10話で有宇くんが瞬お兄ちゃんのタイムリープ能力を奪ってループした先(世界2)では、歩未は助かるが、6話をタイムリープ先にしているので、7話で友利がやさぐれた有宇くんにおクスリ駄目ゼッタイキックをした絵(綺麗)だとか友利のお兄ちゃんが回復した話だとかは存在しない。ただし有宇くんは記憶しているので友利に惚れてしまっているという状態。

そんな10話で一つ目の(ディス)コミュニケーションが起きる。有宇くんの部屋の玄関前での会話ですね。ここで有宇くんはタイムリープ前にあったことについて、今の友利に「ありがとう」と言い、友利は「どういたしまして」と答える。この会話、有宇くんの「ありがとう」は有宇くんがバカだというだけでも解釈できるわけですが(そうしないことも可能)、後半はどうやってもおかしい。ただし、友利という少女の性質を前提としなければ、です。

友利はちょっと変わっていて、例えば、有宇くんが(友利が大好きな)ZHIENDのボーカルと一緒にいると友利に電話しても、友利は全く驚かない。あたかも、すでに「有宇くんがZHIENDのボーカルと一緒にいる」という事実があるのであれば、それは事実なのだから当たり前だというかのように。なおこれはタイムリープ前の世界1での話です。また、10話(世界2)において、有宇くんが自分はタイムリープしてきたと友利に明かした際にもあっさりと信じ、それを前提として思考する。ここで、この前提の前までは友利は世界1をなぞるように動いていたのに対し、前提が与えられて以降完全に分岐するのは面白い。

あったことは否定しない。過去から現在に至るまでは当然として、自分の知らない、もっと言えばもうあり得ない未来ですらも「未来のことなので覚えてないですが」そういうものだと前提する。だから有宇くんの「ありがとう」に「どういたしまして」。そして一つ目の(ディス)コミュニケーションが成立する。

なお、有宇くんの「ありがとう」については、タイムリープ直前に有宇くんが友利を見たことを考えると、確認したかったのではないかとも思います。これは誰なのかと。

いろいろ書きたいことはあるんですが次の(ディス)コミュニケーションについて。12話の「約束」。有宇くんは他人に5秒乗り移れると知ったらカンニングに夢中になるタイプのだめな子なので11話ではカッコよく決めることができなくていろいろと悲惨なことになって入院したりしてたわけですが、その状況でお見舞いに来てくれた友利に「友利、僕はどうしたらいい?」と尋ねる。客観的に見ると友利はタイムリープした有宇くんに事実表明された後は瞬お兄ちゃんたちのグループに交わることもなく普通に自分の部屋で過ごして学校行ってたら人質要因として異人さんたちに襲われてなんとか助かったものの入院して退院して今お見舞いに来てるわけです。「どうしたらいい?」って言われても知らんがな。のはずなんだが、彼女はなかなかスパルタなことを言う。「あなたが今現存する全世界の能力者の力とこれから発症する力全てを奪えば終わります。」と。

友利の言ったことは全くもって正しいわけですが、そんな如何にもすごい主人公にしかできないようなことを、カンニング魔の有宇くんに提案するほど/責任を負えるほどこの(世界2の)友利が彼と接したかと言われると疑問しかない。このような言葉を掛けうるとしたら、有宇くんにおクスリ駄目ゼッタイキックをかまして彼とZHIENDのライブに行って、彼のタイムリープを承認するくらいのことはいるのではないかと。だから、これも「どういたしまして」と同じもので、世界1でのできごとに対する有宇くんの感謝に「どういたしまして」と言った(言う)少女だからこそ有宇くんに責任を負える。

その後で有宇くんの気持ちを確認して「「だったら」言いましょう。待ってます、と」というのも同じ。有宇くんが世界1の友利に惚れたとして、それすらも前提とするこの少女は今有宇くんと指切りをし、世界中の能力を奪いに旅立つ有宇くんに自作の英単語帳を渡す。有宇くんの世界中の能力を奪う旅は、唯一かれの「略奪」能力に対して防御可能な「視認されない能力」を持つ少女の能力を奪うことから始まる。彼女の承認によって。

んで最終回。全世界の能力を奪った代償に記憶を失った有宇くんに対して12話での約束(戻ってきたら恋人どうしになりましょう)を成立させる友利。これは、10話で友利が「私が覚えていなくとも」どういたしましてと答えたのに対して、「あなたが覚えていなくても」約束を守るという形になっている。さすがに同時に「あなたも私も覚えていなくとも」とまではやっていないですが、それでも異常です。初見時からずっと、世界2における友利がいったい何なのか全くわからなくて、今ようやくこの子が過去現在未来全てにおいてあったことを前提とする生き物として一貫していると認識できたのですが、だからといってこの子が何なのかはやっぱりわからない。

あ、有宇くん側についても、最終回で「もうつらいよーやだよー」と言いながら世界各地とびまわって能力を奪っていく有宇くんは、友利の記憶をなくしながらもなぜか友利からもらった単語帳は捨てずに首にかけていて(杖をつく姿と合わさって巡礼するかのように見える)、彼においてもやはり「僕が覚えていなくとも」友利との約束を守るように行動し、遡れば「友利が覚えていなくとも」今の友利に好きだと言ったわけです。つまり、どこにおいても誰においてもコミュニケーションの主客が同じところにいないのに、なぜか成立している。

ただ、このような形を提示されても俺が友利の最後の「おかえりなさい」という笑顔にやられた理由とはやっぱり違うらしい。5回みて友利の性質を把握した今はむしろなおさらです。キックが美しい友利が世界2でもやはり友利だという感慨があるわけでもなく、構造に参りましたしたわけでもない。どちらかというと、タイムリープ能力を瞬お兄ちゃんから奪うことで主人公を引き受けるはめになった有宇くんの「つらいよーやだよー」の先に、一貫性という免罪符のもとに、見惚れるほど綺麗なおクスリ駄目ゼッタイキックをした友利と同じ少女の笑顔を置いたということに対して、なんでここまでやんのかという思いがある。友利の形をしたものに一方的に言葉を投げるよりひどいと俺は思います。つらいから。だってそういうものを見せられたら、有宇くんみたいにやんなきゃって思ってしまうじゃないですか。