2013/01/08

『夏空のペルセウス』 感想

なんだか年末年始ひじょーにバタバタしておりしかも憂鬱なイベント大量発生で全く休まらなかったようですあけましておめでとうございました。

さてすっかり時間あきましたが、体験版の感想
http://sagaslave.blogspot.jp/2012/11/blog-post.html
書いたのに本編感想ないのも座りが悪いので、夏ペル(夏空のペルセウス)の感想を書いておこうと思います。ネタバレあり。

一言で言うと微妙でした。ちょっと期待しすぎてしまったのも悪いんですが、透香さんのルートで肩透かしくらった印象です。なぜそんな印象になったか体験版も含めてプレイ時系列に沿って感想書いていきます。あんまりやる気ないのだけれど…。

始めに簡単に設定書いておくと、主人公と妹の恋(名前)は、どちらも他人の「痛み」を自分に移すという力を持っています。そのせいで人に利用されたり、他人と深くかかわれなかったりしてきました。そんな中で逃げるように物語の舞台となる(同年代の少女が3人しかいない this is エロゲ)ど田舎の村にたどり着く。そこにいた少女の一人は、不治の病に侵されており――と実によく誂えられた舞台設定でしてこうなるともう「救う」うんぬんの話になるに決まってやがると予想して、敏感に気を張って読んでいったわけでございます。

で、共通と透香ルートの序盤までが含まれている体験版。体験版プレイ時の感想は別に書いてますので、簡単にまとめると、主人公が自分の能力を(他人に利用されて強制されて使うのではなく)自分の意思で使って透香を(彼女の許可を得ずに)救おうとしますが、能力が透香にバレてしまい、透香に勝手に救うという行為の傲慢さを糾弾される。

この段階で安心したんですけどね。本編ではこの先を書いてくれるはずですから。自分からみて相手のためになる行為であろうと、一般的にみて相手のためになる行為であろうと、許可を得ない限りは、押し付けでしかない。これが「前提」です。その後どう行動するにせよ。

まあ要するに、俺が体験版プレイして購入決めたときに勝手に期待したものは、この「前提」を踏まえた上で主人公はどうするのか、だったわけです。

でこんな予見を抱いた状態で本編をプレイし始めました。なお、透香さんルートはロックかかってまして、他3人(恋、翠、あやめ)を攻略してからじゃないと進めません。まずは恋さん。個別で一番良かったです。

恋は他のヒロインとは違って特別な位置に立っています。まあ妹だから当たり前なんですが、能力的にもそうなんですよね。彼女だけ、主人公と同じ位置に立つことが可能。また、恋のほうが主人公よりも能力が強いため、主人公は恋に対してのみ普通の人間のように接することができる。つまり、恋を傷つけても、その痛みを感じないでいられる。

最後のやつは極めて重要な特権です。なぜなら俺は、主人公が他人に干渉することを忌避していたのは、例えば自分が素手で相手を殴った場合、その痛みが自分に跳ね返ってくる、ということによると考えているからです。相手の痛みが自分に移る、というのは、そこまで恐ろしいことではない。ましてや相手の痛みをなくしてやっているわけだから。自分は被害者でいられるし、優しい僕ちゃんでいることもできる。何もつらいことはない。快感すら覚えますよ。ああ俺はつらいんだキモチイイっ!!!

そういうことじゃねえだろと。他人に干渉するということは、相手を傷つける覚悟を持つということであって、それによって自分も傷つくという覚悟を持つということでしょう。主人公はこの構造を明示的にしてしまう能力を持つがゆえに、こんな当たり前のことから逃げる言い訳を無自覚に得ているだけです。

ちなみに俺は明示的にしてしまう能力を持たないので、自覚的に他人に干渉しないように努力しています。傷つきたくないからねっ☆

さて俺の話は置いといて恋ルートの話に戻ります。恋さんはすごく賢いので、こういった構造とか、自分が主人公にとっていかに特別な位置にいるかをよーく理解している。例えば、初体験のシーンで、破瓜の痛みを主人公に味あわせない、とかもそうですが、全体にわたってキレッキレの台詞を連発してくれて非常に楽しかったですね。あと、ラストの逃避行は、まあ大好きです…としか…。

続いて翠さん。このルートは甘酸っぱくてふたりとも死ねばいいのに(嫉妬感)。少し真面目に書くと、このルート、体験版やらずに一発目に行ったら「えっ何このヤマ無し展開」ってなると思います。だけど、主人公がどんな奴かとか、その能力の意味するところとかを把握した上でプレイすると、翠ルートは、主人公の悩みだとか、「救う」とか救わねえだとかそんなもんは全てくだらない話で、簡単に(まあ俺にはそんな青春はなかったけれどもな!)解決してしまえるんだ、ということを表現するためにあったんだろうなーという印象を受けます。はぁ…恋がしたかった……

あやめルート。おっぱいでかすぎてもはやモチベーションの維持が困難になりメタに見るしかできず残念な結果に終わってしまったという噂が俺の内部で流れておりますが、このルートは本当にひどい。体験版やってたので透香さんルートでめっためたに打ちのめされることを知ってたから何とかプレイしましたが、そうでなかったら放り投げてたんじゃないかしら。

主人公が勝手にあやめの「心の痛み」を無くしてあげようと能力を使う。当然ながら「心の痛み」なんてもんは今のあやめを構成する重要なパーツの一つです。それを勝手に奪ってしまったせいで、あやめがあやめでなくなってしまう。最悪ですよ。しかも自分が何やっちまったのかまともに理解できていない。プレイしながら「ダメだこいつ」ってずーっと思ってました。お前取り返しのつかないことしたんだよって。

しかも解決策がまたひどい。彼女が失った「心の痛み」を再度植えつけることで、彼女を元に戻す。またもやあやめの許可を得ることなしに。おまけに主人公が考えた計画では、「自分を犠牲にしてもいい」などと悲劇のヒーロー気取りである。もうね、アホかと。

誰かを救うという行為が、自らの犠牲と結びついている精神構造はまあこれまでの経験から仕方ないのかもしれませんけど、お前は自らの意思に関係なく行動を決められることの腹立たしさを、利用されつくした経験からよーく知ってるんじゃないの?っていう。

実際には、透香さんとか恋さんとかの大活躍により主人公の作戦どおりにはいかないんですが、あやめさんに再度トラウマ植え付けてほぼ元に戻して終了という、なんとももやもやする展開で終わります。

ただまあこの段階では透香さんルートで主人公のクソ野郎がメタメタに打ちのめされてここまでの鬱屈とかはどのような形であれ解消されるのだろうと信じておりました(フラグ)。というような状況で透香ルートが開放されたので突入したわけです。

正直もう書くのだるくなっているので、簡単に。主人公が体験版の終わりの段階で透香のことを好きになっていた、とするには描写が足りなさすぎると思う。それならば、あの告発シーンでの透香の美しさに圧倒されて惚れてしまった(俺はそうです)とやってくれれば良かった。

そして、あの言葉を受けて、自らの身勝手さを知って、惚れた相手に同情などいらないと言われてもなお、ただ自分が惚れた相手に生きていて欲しいという身勝手な欲望のままに、彼女を救ってしまえば良かった。あるいは、ただ見るしかできないのであれば、そのまま立ちすくんでしまえばいいじゃない。良くねーけど。

都合よく改変された能力による大団円など、くだらないにも程がある。


以上、勝手に期待した人間の身勝手な感想はこのへんで終わりにしておきます。