2013/06/08

『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 12巻 感想(ネタバレあり)

俺妹12巻読了。ネタバレあり

とりあえず、アニメBD1巻を予約しました。言うまでもなく特典小説目当てです。

今の感情を正確に表現するならば、寂しさの中ですがっている、といったところでしょうか。二度目のキスにすがっている。

んー…、まだ脳内ぐちゃぐちゃしてますが、一応感想じみたことを書いていってみます。

まず、前の11巻(感想はこちら)で京介と桐乃、そして麻奈実の過去が明かされたので、物語上の謎ってのはいくつかに絞られてましたよね。京介の好きな人とは。桐乃のiPodとアルバム。エロゲーよりすっごいこと。細かいことだと「りんこルート」、京介が過去に桐乃にあげたプレゼント(ピアスじゃなくて)とかもありますけど。

で、当然ながら京介が誰とくっつくのかっつーのが、最も気になるところだったわけです。実際、今週月曜から平均一日二冊オーバーの勢いで一巻から改めて読み返してたんですけど、京介の言動に対する桐乃の態度よろしく政治家の発言の揚げ足をとるかのように、京介が「自分から告白する」と言ったときの目的語が桐乃である言質を探しつづけたりしてましたし……

読み返してみると、11巻で麻奈実(と加奈子)の可能性は完全に殺されてしまっているんですね。「桐乃と京介をふつうの兄妹にしてから、よーいどん」という方向性が死んで、黒猫(とあやせ)みたいに桐乃のことが大好きだから、桐乃の想いを閉じ込めさせることなく、同じラインで戦うことを選んだものだけが残った。

単に身勝手に動くときの感情の強度ではなく。自分にとって大切な相手の想いを知ってなお、自分の想いを捨てられない。その身勝手さに呆れ果た人間が、自分を「仕方ない」と苦笑いしながら動いてしまう、その強度こそが問題にされていた。これは「凄いお兄ちゃん」から「かっこ悪い兄貴」という文脈と同じもの。

11巻の最後、12巻のプロローグで予言されていたとおり、あやせが告白し、黒猫が告白された。そんで、自分から告白すると決めていた京介が動いたクリスマス。桐乃の「はい」。現実と妄想の区別がつかなくなったのは俺のほうだっつーの。

その後、二人の人生相談あたりは流れとしてまあ綺麗。近親相姦もののよくある展開を繰り返すのはだるいと感じもしたけど、その中で、京介と桐乃の問題は(よくあるものだとしても)彼らだけのものであると言っているのは良い。凡百の兄妹ルートを全て讃えている。ちょっと嬉しくなったかな。

麻奈実のくだりはメタメッセージがうざいので置いといて、京介と桐乃のキスシーンは奇跡を眺めるように読んでた。そして奇跡の終わり。エロゲーよりすっごいことっていう言霊が、さっき言った兄妹ルート賛歌で消えてることを願ってたんだけどなあ。ただこれが人生相談への二人の回答で、だから怒り狂うとかそういうことはなかった。そりゃあ寂しいけど、この二人の決断に口を挟めるほどのものを俺は持っていないから。

エピローグ。普通の兄妹に戻った二人。楽しそうに秋葉原で遊ぶ桐乃。これで終わっていてくれたら、と思うこともなくはない。読み終わってしまっているのでそのときの俺の反応はもはやわかりゃしないんだけど。A判のご褒美としての「お願い」を使った二度目のキスなんか見せられたらさあ、この先を期待してしまうがな。

「凄いお兄ちゃん」でなく「今のかっこ悪い兄貴」を改めて好きになって結ばれたように、「普通でない兄妹」の恋物語でなく「普通の兄妹」の恋物語を見てみたい。語義矛盾であろうとも。

だってさあ、桐乃は「好きであることをやめない」んだよ?

(追記)
今朝起きて読み返してた。エピローグは、「普通の兄妹」に戻った二人の恋物語が始まるプロローグだと認識することにしますそうに違いない! 一度目のキスシーンで終わった劇的な兄妹ルートには、桐乃がこれまで京介にプレイさせてきたエロゲと同じように結ばれた先はなくて、二人は普通の兄妹に戻ってしまったんですが、これは三年前の事件がなかった(五年前のは残っている)ときに外挿される二人の形と同じものです。例えば、櫻井のエピソードをわざわざ入れたのも、三年前の事件を解消する必要があったから。そう考えるとあの「俺たちの闘いはこれからだ!」ENDもしっくり来ます。だってこの先の普通の兄妹の恋物語は、三年前の事件を起点として持つ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』というストーリーラインでは語り得ないものだから。

といった感じですっきりしたんですが、普通の兄妹の恋愛物も読みてえ……。作者さん次回作書いてるらしいですがタイトルは『俺の妹がこんなに可愛い』とかですかね。ああ実に楽しみだ…

(蛇足)
ネットで感想あさってたら、京介が惚れる理由が薄いというのがありましたが、これについては、彼が黒猫と付き合っていたときに「好きなやつの前ではかっこつけたい」と言っていることが全てでしょう。かっこつけ方は変わっていったけれど、彼がこの物語を通じてずーっと、一番かっこつけたかった相手は桐乃ですから。その相手が実妹であったというだけで。